Author: | 長尾玲子(翻) | ISBN: | 1230002453095 |
Publisher: | かなめ出版 | Publication: | July 30, 2018 |
Imprint: | Language: | Japanese |
Author: | 長尾玲子(翻) |
ISBN: | 1230002453095 |
Publisher: | かなめ出版 |
Publication: | July 30, 2018 |
Imprint: | |
Language: | Japanese |
『長尾玲子 画集 2』のために
前作『長尾玲子 画集』が、幸いにも、思った以上の作品集になったと思えることもあって、もう一集を編むことにしました。
本篇は、亡き妻の作品集であることに変わりは無いのですが、収録作品の系列がややユニークなものです。
つまり、巻頭の、前作に収録し漏らした、長女を描いた油彩タブローを除くと、他の全部が、花を描いた水彩画です。
前作の編者前書きにも書いたのですが、妻は、10年に及ぶ、徐々に悪化するパーキンソン病との闘病を続けた後、逝ったのでした。
その間、私も、家族の助けも得て、幸い、介護退職に至ることもなかったとはいえ、社会性(社交性)をほとんど放棄して世捨て人然として過ごしたのでした。この体験は、経験したものでないと分かりにくいものだと思います。
よく、世間には、働き盛りの若い人が、介護退職に追い込まれるケースもあると見聞きします。
私も、自分の話を理解してもらうために、ゼミのOB・OG会の参加者(ほとんどが働き盛り)などに、介護退職の大変さを引き合いに出したりしたのですが、(幸いにも)誰も経験者が無く、しかし、反面として私が経験した苦衷もほとんど理解はしてもらえなかったようです。
それはともかく、その闘病中の妻は、絵心の衰えることもなく、かつ絵筆を振るう力も無くしていませんでしたので、私は、頻繁に花々を鉢植えで買い求めては、それを画材に妻は、ほとんど毎日(のように、とおも思えましたが、確かめてみると、最晩年の数年間に限られてはいました)、結構な数の水彩画を残しました。
こうした成り行きは、私の心境を、かの啄木の「花を買ひきて」の「本歌取り」風に腰折れにすれば――
朋輩(とも)はみな
気侭(きまま)の空に羽搏(はばた)くを
妹(いも)の描くらむ
花求め来ぬ
といった風ではあったのです。
本編は、その時の作品をほぼ総て集めたものです。自分で言うのもなんなのですが、作品はけつして、貧弱であったり、惨めったらしくしょぼくれ(・・・・・)ているどころか、伸び伸びとして、美しい色彩に満ちていて、十分の鑑賞に堪えるものであることは、ご覧になって頂ければお分かりのことと思います。
亡き妻の記念碑でもありますが、また実際に鑑賞に堪える作品集として世に問いたいと思っているのです。
2018年4月吉日
編者 長尾 史郎
『長尾玲子 画集 2』のために
前作『長尾玲子 画集』が、幸いにも、思った以上の作品集になったと思えることもあって、もう一集を編むことにしました。
本篇は、亡き妻の作品集であることに変わりは無いのですが、収録作品の系列がややユニークなものです。
つまり、巻頭の、前作に収録し漏らした、長女を描いた油彩タブローを除くと、他の全部が、花を描いた水彩画です。
前作の編者前書きにも書いたのですが、妻は、10年に及ぶ、徐々に悪化するパーキンソン病との闘病を続けた後、逝ったのでした。
その間、私も、家族の助けも得て、幸い、介護退職に至ることもなかったとはいえ、社会性(社交性)をほとんど放棄して世捨て人然として過ごしたのでした。この体験は、経験したものでないと分かりにくいものだと思います。
よく、世間には、働き盛りの若い人が、介護退職に追い込まれるケースもあると見聞きします。
私も、自分の話を理解してもらうために、ゼミのOB・OG会の参加者(ほとんどが働き盛り)などに、介護退職の大変さを引き合いに出したりしたのですが、(幸いにも)誰も経験者が無く、しかし、反面として私が経験した苦衷もほとんど理解はしてもらえなかったようです。
それはともかく、その闘病中の妻は、絵心の衰えることもなく、かつ絵筆を振るう力も無くしていませんでしたので、私は、頻繁に花々を鉢植えで買い求めては、それを画材に妻は、ほとんど毎日(のように、とおも思えましたが、確かめてみると、最晩年の数年間に限られてはいました)、結構な数の水彩画を残しました。
こうした成り行きは、私の心境を、かの啄木の「花を買ひきて」の「本歌取り」風に腰折れにすれば――
朋輩(とも)はみな
気侭(きまま)の空に羽搏(はばた)くを
妹(いも)の描くらむ
花求め来ぬ
といった風ではあったのです。
本編は、その時の作品をほぼ総て集めたものです。自分で言うのもなんなのですが、作品はけつして、貧弱であったり、惨めったらしくしょぼくれ(・・・・・)ているどころか、伸び伸びとして、美しい色彩に満ちていて、十分の鑑賞に堪えるものであることは、ご覧になって頂ければお分かりのことと思います。
亡き妻の記念碑でもありますが、また実際に鑑賞に堪える作品集として世に問いたいと思っているのです。
2018年4月吉日
編者 長尾 史郎